2022/06/01解決事例
転職後の事故について、転職前の収入を前提に休業損害・逸失利益を算定する和解が成立しました(後遺障害14級)
【事案の概要】
依頼者は追突事故に遭い、1年以上の入通院治療を経て自賠責保険に等級申請をしたところ、頚部痛、腰痛、下腿痛等について「局部に神経症状を残すもの」として後遺障害等級併合14級が認定されました。
その後、相手方弁護士と示談交渉しましたが、事故当時は会社を辞めて親の経営する自営業を手伝っていたことから、親の前年所得の3分の1相当を本人の所得とする示談提示を受けました。
しかし、当方の請求額との開きが大きかったことから、訴訟提起によって解決を図ることとしました。
訴訟では、親の過去数年分の確定申告書類を提出するとともに、依頼者が親の家業を継ぐため会社を辞めて仕事を手伝っていた事情や、翌年からは自身の名前で確定申告を行っていたこと、業容拡大のために新たな投資をしていたことなどを、関係資料と共にていねいに主張・立証しました。
その結果、裁判所より、事故当年は親の手伝いとして転職前収入の4分の1が相当、事故翌年以降は自らが主体となって経営していたもので転職前収入の4分の3が相当、以上を前提に休業損害を計算。逸失利益は転職前収入全額を前提に計算した和解案が示され、慰謝料等もふくめて相手方方弁護士の当初提示額より約150万円上回る和解が成立しました。
【コメント】
休業損害の算定は事故前の現実収入を前提として行うのが原則ですが、事故当時転職していた場合は事故前の収入が得られる保証はないため、どのように算定するかが問題となります。
しかし、「転職後は転職前程度の収入は得られないはずだ」という主張に安易に与すると、転職者は事故に遭うと正当に得られるはずの賠償額を得られないということになりかねません。
転職に至った経緯や転職後の稼動状況、転職前後における収入(営業利益)の推移等をていねいに主張、立証することにより、「事故に遭っていなければこの程度の稼働利益は得られていたはずだ」ということを裁判所に認定してもらう必要があります。本件では、依頼者より詳細な資料を提出してもらい、証拠化することで、当初の目的を達成することができました。